公開:2026.05.04 12:12 | 更新: 2026.05.03 03:12
ゴルフコースでグリーンを全く新しく作る機会というのはあんまりないので、ゴルフ場関係者でも案外詳しい人は少ないんじゃないかと最近思っています。設計者や造成関係者は詳しい可能性が高いですが、造成後のメンテナンスにまつわる苦労話は耳に入らないような気がします。つまりフィードバックがないので詳しくても何が正しかったのかよくわからないままということがあるのではないと。
かくいう僕もこれまで全く新規にグリーンを作ったのは過去20年の間で4回ですかね。いま、5回目のチャレンジでナーセリーを作るところです。4回にカウントしてないグリーン造成に練習場のグリーンやナーセリーのグリーンがありますが、だいたいケチって排水を取らなかったり、安い砂を使ったり、砂の量を減らしたりしてるので除外してます。とはいえ、こういう端折って作ったグリーンは一つもうまく行っていないので経験値としてはカウントして良いかもしれませんね。
1回目のグリーン造成は僕はもちろん、当時のグリーンキーパーもなんの知識も経験もない状態でやりました、今思えば。その後、僕自身もKGAの講習会に行って講演を聞いたりしましたが、いかんせん情報量が足りない。大きなターニングポイントは箱根CCでグリーンキーパーを長年務めた眞利子氏が京葉CCのキーパーになったときでした。彼は箱根で全グリーンのワングリーン化工事を行うために学んだ知識と経験がありました。ちょうど京葉で広いアプローチ練習場が欲しいと思っていたので眞利子氏とともに新しいグリーンを作りました。なにもかもが知らないことばかりで非常に大きな学びになりました。
このときにUSGAのGreen Sectionという芝草を研究する部隊があり、グリーンに適した土壌の基準を出していることを知りました。土壌に使うのは砂とピートモスのみで30cmの厚み、その下の排水層にグラベル(砂利)を10cm敷いて、肋骨暗渠排水を取る、という構造で、砂とピートモスとグラベルにそれぞれ推奨値があり、それらの組み合わせも基準値があります。サンプルを取り寄せてUSGAが認定するラボに送り検査をしてもらい、適合したものをグリーンに使いました。結果は当時としてはかなり満足の行くものでした。僕はもうこれでグリーンは分かった、という気になっていました。
次に練習グリーンの面積が足りなくて毎年痛みが激しいから2面増やそうということになりました。このときにはちょうど現在の深田キーパーに代わっていたと思います。もう分かった気になってた僕は同じ業者に同じ砂を頼んで同じような配合でテストし、パスして造成しました。しかし、結果は微妙でなんだかうまくいかないのです。前回の検査結果とよく見比べてみたら透水係数がかなり大きくなっていました。同じ砂を頼んだつもりだったのですが、砂は自然の産物で時間が経てば採掘する場所や層が変わって分布が変わってしまうことを知らなかったのです。気がつかないうちに昔よりも分布が粗くなっていたのです。
そして4回目は昨年の11番グリーン造成時ですが、前回は業者が間違って粗めを納品した、と思っていたので「前回より細かめのもの」というオーダーでお願いしました。ラボにも送って基準は満たしていました。ところが今回もやっぱりうまくいかない。よくよく確認してみたら前回よりもさらに透水係数が上がってるではないですか。芝が成長したあとならともかく、種から育てるのにこんなに水も肥料も蓄えない土壌で芝を育てるのはかなり厳しい。USGA基準を満たしてるのになぜ。。。
今の時代、情報はネットに溢れていて、自動で翻訳もしてくれる、なんならAIに聞けばいろいろ答えてくれる。というわけでAIに聞いたら、「もっと細かい砂かほんの少しシルトを混ぜろ」というのです。それも道路に敷く砕石を作る際に出る粉状のものを入れろというのですが、探してもそんな物を売ってる業者はない。もっともっと細かい砂を含む分布の砂を業者に聞いても出てこない。そこで思い出したのがガラス工場時代にガラスの原料として使っていた砂です。
シリカ純度の極めて高い、細かく粒の揃った砂で、オーストラリアの砂漠から露天掘りで取れる砂で、量はもうほぼ無限にあると言って良い在庫の心配がない砂です。ただ、高い。昔から高かったけど、いまは特に高い。今まで使っていた国産の砂の4倍はする。でも、他にやりようがないんです。今回ナーセリーのために取り寄せたサンプルがさらに粗くなっていて、ついに単独でUSGA基準を満たさなくなったのです。で、よくよく聞いたらもっと細かい砂が別のところで取れていて、そっちがあると。調べたらまぁまぁ細かいけど丸いし粒度が揃いすぎていて明らかに透水係数が高い。締まりも悪い。とりあえずアメリカのラボに送ってみるとなんとか基準は満たしそうだと。オーストラリアの砂も送っていろんな比率で混ぜてもらったところ3:1で混ぜればなんとかいい塩梅に落ち着くんじゃないかということになって、よし、高いけどそれで行こうということになりました。
なので、今回作るナーセリーは単価で言うと市場最もお高いグリーンになります。今回ここまで拘ったのにはいくつか理由があって、一つは透水係数を現実的な数字まで下げること、もう一つは透水性と関連するけど粒度分布を広げること(CU値を上げる)で土壌の締りを良くすることが目的にありました。
いままでグリーンの仕上げに手こずった理由は一つではないですが、大きな理由の一つが丸すぎる砂、粗すぎる砂、揃いすぎる砂のせいで締まりが悪く種を蒔くにしても轍ができる、芽が出てからも根がしっかり張らないので雑に水を撒けば飛ばされる、伸びたから刈り込もうと思っても根から剥がれる、なんて状態でした。もっとしっかり締まる砂であればすべての作業がスムーズに行くはずで今回はなんとしてもそれを実現させて実証したかったのです。目標は播種から2か月で使える状態にすることですが、砂の搬入やら造成が遅れに遅れていてどうなることやら。。。

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