京葉カントリー倶楽部

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    公開:2010.04.28 11:11 | 更新: 2022.08.25 04:24

    パインハーストNo.2の改造—Lost Artの復活—

    2014年に全米オープンと全米女子オープンが2週続きでパインハーストNo.2で開催される。パインハーストはドナルド・ロスの代表作であり、コースの脇に居を構えて30年(1907年から1936年まで)に渡って完成度を高め続けたコースである。

    ランキングでもトップ10の常連コースであったが、近年評価を落としている。その理由は外部からは分かりようもないが、その100年にも及ぶ長い歴史の中でパインハーストNo.2はロスの理念を失ってしまったのである。

    ロス自身はNo.2について次のように語っている。

    Pinehurst Number Two is the kind of course where every bunker could be removed and you’d never know it.

    Bearing in mind that golf should be a pleasure and not a penance, it has always been my thought to present a test of the player’s game; the severity of the test to be in direct ratio with his ability as a player. I carried out this thought in the changes made on Number Two.

    —Donald Ross Golf Has Never Failed Me

    ロスはどのバンカーもいつなくなっても気づかれないようなものだと言っているし、ゴルフは戒めではなく楽しみだとも言っている。楽しみとプレーヤーの技術のテストを両立させるべきだと考えていて、能力に合わせて難しさが変化するようなコースを理想としていたことが分かる。そしてNo.2の改造でそれを試している。

    今回No.2の改造、というより復元を行うのは現在ミニマリストとして高く評価されているクーア&クレンショウのコンビである。彼らは言う。

    When you see it and feel Pinehurst, you know it’s something different,” said Crenshaw. “In Ross’ mind, it was the best way he believed a course should be played – his masterpiece. His courses are so beautifully balanced, intended to test every part of your game. This piece of ground was special to him. To contribute our ideas here is a high, high honor.

    Pinehurst Press Release

    この仕事を引き受ける設計者は誰であろうと、ロスの思想を理解し、再現できる能力を持つと主張するであろうが、それが真実であるかは歴史が答えを出すだろう。個人的にはこの仕事に最適なチームをパインハーストは選んだと思う。他に可能性があるとすれば、同じくミニマリストの巨匠・トムドークしかないだろう。

    フェアウェイを拡げ、失われたウェイストエリアを復活させ、いくつかのバンカーを増減させるようだ。特にフェアウェイはどのホールも50ヤードから60ヤードに拡げ、グリーンへアタックする角度にバリエーションをつける。

    Fairways on all 18 holes of Pinehurst No. 2 have been substantially widened to 50-60 yards, providing golfers with better angles to its signature greens and creating natural edges between fairway and rough.

    —Pinehurst Resort “Uncovering No.2″

    このような改造が意味を持つのは、No.2が世界最高のグリーンコンプレックスを持つからであるが、それはピンポジションによって正解となるアングルが変わり、ティーショットの狙いが変わるからであるし、ミスしてもフェアウェイからならリカバリーも楽しめる。上級者であるほど、グリーンから逆算してティーショットの狙い目が狭くなり、自縄自縛に陥るが、初級者は広いフェアウェイを楽しめるのである。パインハーストの戦略性はほぼ全てこのグリーンコンプレックスの秀逸性に依存しているし、グリーンコンプレックスが天才的であるために、フェアウェイはたんにだだっ広いだけの方がむしろ戦略性を高めるのである。

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