公開:2026.08.01 02:38 | 更新: 2026.08.01 05:44
今回はグリーンナーセリー造成についてです。コース内の芝が傷んで交換が必要になったときのスペアと芝生を育てる圃場をナーセリーといいます。グリーンと同じ状態を維持して、いざという時に備えるのが役割です。コース管理棟の近くに約300㎡のナーセリーを用意しました。当初は4月1日に播種して梅雨入り前にはある程度グリーンとして仕上げることを目標としていましたが、実際に播種できたのは5月13日でした。目標は7月12日までに4mmで刈込みを開始することです。
グリーンの構造については前回のポストでも書きましたが簡単に振り返ります。
京葉CCではUSGAのGreen Section推奨の2層構造(砂層と礫層からなる)を採用しています1。砂の化学的特性や物理的特性、粒度分布などを確認し、それらから生じる透水速度や孔隙率が基準を満たしているかを検査します。資材サンプルをUSGA認定の研究所に送って検査してもらっています。京葉CCではTifton Soil Testing Labというアメリカのジョージア州にある研究所にお願いしています。

今回は2種類の砂を混ぜることにしたので通常とは少し異なるのですが、Saturated Hydraulic Conductivityというのが透水係数、Porosityというのが孔隙率になります。孔隙率はNon-Capillary(非毛管)とCappilary(毛管)の2種類あり、それぞれ意味が異なります。サンプルを完全に水で浸して重力によって水分が抜け落ちた状態で残った空気と水の容積率を表しています。上の表でいうと、一番上の行は青森M砂100%の場合、透水速度は毎時50.2インチ、空気量を表す非毛管孔隙率は32.2%、水分保持量を表す毛管孔隙率は12.3%と読みます。この砂だけでグリーンを作った場合、水をたっぷりまいてしばらくすると保持している水分量(液相)は12.3%しかない、ということになります。また、重力水によって空気も吸い込まれ、32.2%の空気(気相)を含むことを意味します。これらの数字はグリーン完成後の水分量を計測するときに非常に参考になります。
一般に、グリーンとして使用していくと、芝の根や古い根や葉の残骸(有機物)によって保水量が高まっていきます。ベースの砂の保水量が12.3%なのに、グリーンとして使用していくうちに30%などと高い数字を示すようになったら有機物が分解されずに堆積していると予想することができ、アグレッシブなエアレーションが必要だろうと推定できるわけです。計測できる深さの異なるロッドを持っていれば、どの深さまで有機物が堆積しているかも予想がつきます。もちろん、物理的にサンプラーで土壌を確認するのが一番良いですが。


CU値は粒度分布の一様性、すなわち土壌の締まり具合を示す値で、この値が高いほど粒度が一様に分布していて隙間なく砂が詰まることになります。逆にCU値が低いと粒度が揃いすぎている、すなわち同じサイズの砂ばかりで構成されていると隙間を埋めることができず歩くと砂が動いてしまうような締まらない砂になります。
日本で手に入るグリーンに適した砂の中で、CU値が適切なものを入手することが非常に難しくなっているため、今回はオーストラリアのフラッタリー岬で取れる、粒度の細かい砂を混ぜることにしました。

青森M砂もフラッタりーもそれぞれ粒度分布の一様性が低いのですが、青森M砂は0.5mm〜0.25mmの粒度が65.6%、フラッタリーは0.25mm〜0.15mmの粒度が49.1%とピークが異なるため、混ぜるとやや一様性が増します。最終的に青森M砂:フラッタリー=75:25で混ぜることにしました。そしてこれらのサンドミックスにピートモスを90:10で混ぜたものを土壌とすることに決定しました。
日本の夏の蒸し暑さから、日本では透水係数を重視する傾向があるように思えます。USGA基準でも毎時6インチ以上となっており上限は指定がありません。しかしながら、これまでの経験から透水を重視しすぎると上述の孔隙率やCU値を犠牲にすることになり良い結果にはつながらないというのが現時点での結論です。透水が良すぎると散水頻度が上がって、湿潤と乾燥を繰り返しドライスポットを発生させる原因になっているようにも見えます。
pHについては化学的特性、物理的特性を満たした砂(通常はシリカで中性だから)であればピートモスを混ぜることで自然と酸性になるのであまり気にしたことはないですが、もし、石灰石などを含み検査結果がアルカリ性だった場合には別の砂を探すか、肥料や薬品の使い方に気をつけたほうが良いでしょう。
使う砂、ピートモス、砂利が決まったらグリーンを造成し、播種の準備に入ります。
播種をする際には人が中にはいって作業するのでCU値が低すぎると足跡や轍ができたりします。最終的に4mm以下で芝を刈り込み事になるので、播種の時点でできる限り平滑な面を維持するのが望ましいわけです。ここで10mmも段差ができてしまったら、まず最初の刈り込みで地面をかじらないためにも25mm程度芝を伸ばす必要が出てきます。そして、刈高を下げるために頻繁に目砂を入れて凹んだ部分を持ち上げていく必要が出てきます。なので、まずこの段階でCU値が重要になってくるわけです。
さて、ある程度しっかり締まった砂面ができたらまずは肥料を散布します。種を播いたあとにグリーン内には入れなくなるので先に散布しておくわけです。肥料は粒剤で窒素とリン酸を多く含むものが良いです。今回はNPK(窒素・リン酸・カリ)が12-24-8のものを30g/㎡まきました。リン酸は根の生長を促進するので、播種時には特に重要です。また、発芽後の若い芽は非常に弱く、細菌による立ち枯れを防ぐために事前にタチガレンを散布して土壌を殺菌しておきます。その後、軽く散水して翌日の播種に備えます。
種がきれいに発芽するためには良い具合に種を砂で被覆することが大事です。これにはいくつかの流儀がありますが、僕のおすすめの方法は以下のとおりです。
播種のタイミングが遅れて5月13日に播種したので気温が高く、発芽は5月17日に確認できました。


発芽してからは根が下に伸びるのを意識しながら徐々に散水量を増やし、間隔を広げていきます。気温も高く肥料をしっかり与えているので、しっかり散水すればぐんぐん延びていきます。


上の写真は発芽確認翌日の5月18日の様子です。遠目に見るとしっかり発芽しているが見えてきました。タイヤの跡のような空白は播種の失敗で、落ちた量が少ない箇所です。この時期はまだまだ根が浅いので霧吹き状に手散水をしていますが、播種直後のように頻回にやる必要はないです。



播種後約一週間後の5月21日の様子です。播種ムラが酷いですが、一応薄っすらと芽が出てるのがわかります。

5月23日の状態です。長いところでは20mm、概ね14mm程度に伸びています。播種ムラがなく、天気が晴れていれば既に刈り込みを開始していたかったぐらいの状態です。実際には雨が多く地盤が緩かったので刈り込みによって芽が抜けてしまうことを恐れて刈り込み開始を遅らせました。本来であればこの頃に10mm程度で刈り込みを開始したかったです。


5月24日から刈り込みを開始しました(上の写真)。刈高は13mmです。問題なさそうだったので25日は10mm、26日は9mmで刈っています(下の写真)。


一つの種から出る芽から葉が伸びてきて分けつし、株状に葉を増やしている段階です。



上の写真は5月29日の刈り込み前の状態です。密度の濃いところはしっかりしてきました。播種前に播いた粒剤の肥料の効きが悪くなってきたように見えたのでここらへんから窒素を適宜散布していきます。
ここからは肥料散布、散水、刈込、目砂を適宜行うことで匍匐茎を出すように促し密度を上げていく作業です。



上の写真は6月5日です。刈高は8mmです。刈高が下がったせいか芝は薄く見えます。このあと6月7日から梅雨入りしています。


上の写真は播種からちょうど一ヶ月後の6月12日です。刈高は7mmです。播種ムラの薄いところも埋まってきました。



6月19日、刈高6.8mm。



6月26日、刈高6.0mm。


7月3日、刈高5.6mm。梅雨明けしそうな感じだったので、散水間隔を毎日から1日おきに変更しています。本格的な夏が来る前までに根を深く下ろすことを期待して水を切ります。


7月10日、刈高5.0mm。回転刃の多いジョンディアの新しいグリーンモアのテストをしたところ、刈り込みストレスが強かったようで、筋状に黄色く傷んでしまいました。気温も30度を越えるので回復が難しいです。



播種から2ヶ月たった7月12日です。刈高は5.0mmでキープ。この時期これ以上刈高を下げるのは危険と判断しました。目標だった4.0mmまでは到達しなかったですが、結果には満足しています。
この時期の施肥については基本的には窒素のみを与えました。冬用の即効性肥料で12-0-12という粒剤があったのでそれを使いました。たまに尿素も使っています。今年の梅雨は晴れ間がなくしっかりした梅雨で雨の日が多かったように思います。それでも毎日水分計で水分を計ってみると深いところに水が到達していなかったのでスプリンクラーで夜間散水は継続しました。目砂は0.5mm程度の薄目砂を週に一回程度入れています。
肥料、水、目砂、刈込をしっかり行うことでターフが形成されていくさまを確認できて大いに勉強になりました。当初の予定通り4月1日に播種できていれば夏までにグリーンとして使用開始できる可能性を感じるところまで行けましたし、ゴールデンウイーク後の播種でも天気が味方すれば秋には楽に使用開始できる自信もつきました。
最初の準備をしっかり行うことがその後の成功につながることがよくわかりましたが、他方で播種ムラなどは案外あとからリカバリーできたのでなんとかなるもんだな、というのも正直な感想です。それでも完璧な準備ができたほうが良いことは間違いないです。
作業中は刈高を下げるタイミングが遅かったな、とか、肥料をもっと早い段階からしっかり与えるべきだったとか反省はありましたが、こうやって振り返って当時の写真を見てみるとむしろ刈高を下げるのが早すぎたようにも見えます。芝の生長にとって適温であれば一日で様子が変わるのでそこまで神経質になる必要もない気もします。やってみてリアクションを確認しながらでも良さそうですが、大事なのは目を離さず観察することです。変化を見逃さずにすぐに対応できれば芝をそれに応えてくれます。夏に入ってしまうとできることは限られるのでそれまでの勝負かと思います。
今後は35度を越すのが当たり前になった夏をどうやって越すのかの挑戦です。通常梅雨明け後から約2ヶ月ぐらい35度を越す日が続くと覚悟しています。次回は新グリーンの夏越しについてのポストを書きたいと思います。
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