公開:2010.03.02 11:19 | 更新: 2020.10.24 02:21
闘いを挑み続けるコースはプレーヤーをゴルフの虜にするであろう。
[...しかし]これらのような有名なホール—プレストウィックの「アルプス」やノースベリックの「レダン」など—を他の場所で模倣する誘惑に負けてはならない。特定な有名なホールに合わせてコースを造れば、必ずや落胆するこになるであろう。
—Donald Ross “Each Course Must Be Original” Golf Has Never Failed Me
僕はロスの傑作・パインハーストNo.2が大好きなので、ついロスの言葉を引用してしまうのだが、彼は良いコースの条件にオリジナリティを挙げる。実際、パインハーストNo.2は地球上の他のどこにもないユニークなコースである。
さて、そんな僕が最も敬愛する設計家であるロス大先生は「レダン」を他で模倣することなかれと言っている。それだけではなく、レダンの特徴である、グリーン全体が後方に下っていくようなホールは面白くない、とも主張している。
うしろに向かって傾斜しているグリーンはあまり面白いものではない。なぜならばプレーヤーにリスクを取らせる余地を奪ってしまうからである。同時に、そのようなグリーンは多かれ少なかれブラインドになりがちなのである。
—Donald Ross “Redan and Punchbowl Greens” Golf Has Never Failed Me
レダンとはスコットランドのノースベリックの15番ホール・パー3のことであるが、ティーから見てグリーンが左45度に斜めに置かれ、右手前から左奥に向かって全体が下っている。そして左手前と右奥はバンカーでしっかりとガードされている。
レダンを表現するの良く見られる修辞句は「世界で最もコピーされたホール」である。ロスの警句をよそに、世界の名コースのそこかしこでコピーされている。
写真ではわかりにくいが、正面に見える二つのバンカーの先から左に向かってグリーンが傾斜している。左側の窪んでいるあたりがグリーンの左手前をガードするバンカーである。グリーン面はまったく見えない。
こちらはニューヨークのロングアイランドにあるシネコックヒルズのレダンである。こちらの方がわかりやすいが、やはりグリーンの面は一切見えない。ニュージャージーにあるサマーセットヒルズの2番ホールにはA. W. ティリングハーストによるレダンがある。C. B. マクドナルドのナショナルゴルフリンクスの4番ホールもレダンである。パインバレーの有名な13番ホールのパー4もレダンである。
ノースベリックのレダンはこれはまた素晴らしいホールであり、セント・アンドリューズのエデンと同じくらいそこかしこで模倣されているホールである。オリジナルは完璧なホールとはとても言い難い。あまりにブラインド過ぎるし、意味のないバンカーが多すぎる。しかし、このホールに隠されている数々のアイディアが秀逸なのである。そしてこのアイディアが設計家に面白みのあるホールを作る発想をおおいに与えるのである。
レダンは200ヤードほどの長さを持ち、大きなバンカーがグリーンの左半分を隠している。そして左から右に下っているので、プレーヤーはバンカーの上を直接超えるか、右から左へ曲げていくショットが要求されるのである。
—Alister Mackenzie The Spirit of St. Andrews
マッケンジーのオリジナルレダンに対する評価は厳しい。しかし、僕はオリジナルが一番戦略性が高いと思う。オリジナルレダンはグリーンの右手前と左奥には広いスペースがあって、右手前からドロー気味に転がして乗せていくこともできるし、左奥の広いスペースにあえてオーバーさせて上りのアプローチを残すという作戦も悪くない。また、フェードボールでグリーン上に止めることも、高い技術が要求されるが可能である。このように一つのショットで少なくとも3通りの攻め方ができるホールはそう多くはないだろう。ロス大先生には申し訳ないが、やはりレダンは偉大であり、コピーされたホールもそれぞれが面白みを持っていて価値があるといえよう。
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